素顔が見られる、女の子投稿型フォトダイアリー。
7: 桜花爛漫(おうからんまん)
あれから、数回彼女の中で果てては酒を摂取したかの様に脳が酩酊し始めた。
普段だったら酒で気持ち悪さを感じる酔い具合だが、今は違う。
満足感が止まらない、そんな嬉しさの酔いに荒んだ心が潤いで満たされたのだ。
「Kさん、ちゃんと水分補給してね。身体壊しちゃうよ。」
「あ、ありがとうございます。……桜さん、いつも日にちが空いちゃってごめんね。」
「えっ?」
「俺はここが"初めて"だから。こういうお店の【常識】とか知らないからさ…。頻繁に来れれば良いんだけど…」
ヤバい、日常的な"慣れ"でこのままだと暗い話に流れてしまう。
そう思い始めたら焦りで、目を泳がせた。
俺はいっつもこうだ。根暗だから楽しい話題すら女の子と普通に会話する事も出来ない。
折角、激務を乗り越え頑張って手に入れた貴重な時間が無駄になってしまう。
すぐに口を開こうとすれば突然、「ムギュっ」と白い手のひらで両頬を優しく包み込まれた。
「いつもKさんが、"頑張って会社の支えになっている事"を知ってるよ?どうして、そんな不安そうな顔をするの?Kさん自身に失礼だよ。」
彼女はそう答えながら、にっこりと笑う。
そんな顔で俺を見つめながらも相も変わらず、桜さんはその柔らかい手のひらで俺の顎をムニムニしながら弄(もてあそ)ぶ。
「私がKさんにそんな気持ちを抱かせてしまうくらいには、Kさんからそれ程まで【さくらを気に入ってもらえている】と感じれて自信が付く」
「けれど、Kさんが不安になる様な顔になるのはちょっと腑に落ちない。どうして?さくらを喜ばせてくれるのは、いつもKさんだけなのに。」
その言葉を耳にした瞬間、顔が熱に包まれる。
危うく、目頭すら熱くなり掛けてしまった。
"初めて"会った時もこうして温かい言葉と、その笑顔で心が救われたことを思い出してしまう。
あの時の君は少しだけ、目に怒りと力が込められていたけれどそれは"心配"から来るものだって数回目の逢瀬(おうせ)に聞いたんだったな。
「桜さん、ありがとう。君と逢うためにまた、仕事を頑張れるよ」
「頑張り過ぎないでね。と言っても…、真面目で気遣い上手のKさんは無理しちゃうんだろうなぁ」
「いつもながら、こんな俺を褒めてくれてありがとう」
「謙虚すぎるよ…。まぁ"さくらだけが"Kさんの頑張りを知っているのは、満更でもないけれどねっ。」
えっへん。と効果音が付きそうな、そのドヤ顔に愛おしさが込み上がる。
この子の魅力は、いつも『明日への糧となる勇気をくれる。』
また、この子に逢う為にも今後も力を入れて仕事を取り組まなければならないな。
「また、必ず君に逢いにくるよ。君の笑顔を見たいから。」
その言葉を掛けた瞬間、満開の桜の様に彼女は幸せそうに笑ってくれた。
次回に続く。
5: 乱れ桜
ある程度の水をタオルで拭き取ってもらい、直様(すぐさま)ベッドへと足早に2人で傾(なだ)れ込む。
「んふふ。Kさん、だいぶ余裕がなくなってるね?接吻(キス)"も"気持ちよかった?」
「めっちゃ、気持ちよかったです。」
「あはははっ。それなら、良かった。私もKさんとの接吻で濡れちゃった。ねぇ、聞こえる?」
__くちゅり。と自身の"薔薇の花周り"をその細い2本の指で弄る。
触れた箇所から僅かに音を鳴らして、挑発する様に目を細める桜さん。
何ヶ月もの間、触れたくて仕方がなかった彼女の肢体(したい)が今、この瞬間から存分に堪能が出来るのだと実感すれば、自分の脳が痺れて酔いそうになる。
「私の身体、たくさんKさんに触(ふ)れて欲しいなぁ。接吻もたくさんしよう?」
そう口にした彼女は、細い両腕を俺の首に回して、グッと顔を近づけた。
触れそうか触れそうじゃない距離で止めて、吸いつきたくなるその唇を緩やかに開けばこう囁く。
「今日は、満足するまで思う存分に乱れちゃおうよ。」
甘い声を耳にしたその瞬間、衝動を抑える僅かな細く巻かれた糸がプツンと切れる音がした。
6: 舞い散る花の如し
それからは無我夢中だった。
拙い腰の動きが自分ですら、もどかしさを感じるのに下にいる桜さんは平気だろうか。
その不安を誤魔化す様に何度も、彼女の唇に触れては中の締め付け具合に理性が吹っ飛びそうになる。
自身を突き上げる度に、桜さんの細い唇から漏れ出す吐息と善がり声でそれが、より俺の中では興奮剤となった。
動きに激しさが増す中でも、甘い声を上げながら俺の身体へと細い手足を懸命(けんめい)に巻き付けてくる。
その強い衝動に応えてくれる健気(けなげ)な姿に目を細めながら嬉しさが溢れた。
(何とも、愛らしい子だよなぁ…。)
耳元で感じる微かな吐息に、脳がどこまでも蕩けそうになる。
この瞬間も含めて、これから1分1秒と時間が流れようとも、この間(ま)に無駄な会話なんていらない。
思うがままに快楽を感じられれば、それで良いのだ。
次回に続く。
3: 花の顔(かんばせ)
名前を呼ばれるまでのこの時間が、短い筈なのに長く感じてしまう。
今か今かと待つ、この心境はまるでコンサートや舞台劇の幕が上がるのを待っているかのようだった。
そんな思いが届いたのか頭上から声が降ってきた。
「Kさん、大変お待たせ致しました。姫さんの所までご案内致しますね。」
その声と共に立ち上がれば、竹谷さんの後ろを着いて歩き出す。
やっとだ。何ヶ月も彼女と時間を過ごす為にキツイ業務やパワハラのハゲ茶瓶(ちゃびん)上司に負けじと耐え抜いたのだ。
今日までそれを乗り越えて、苦労してきた甲斐が報われるんだ。と心が弾(はず)む。
少し歩いた先に案内を促(うなが)された俺は、曲がり角で待つ『一輪の花』の顔(かんばせ)に心を奪われる。
「Kさん、お久しぶりだね。逢いたかったよ。」
「"桜さん"、俺もずっと逢いたかった…。」
4: 泡沫(うたかた)
案内された部屋に足を踏み入(い)れば、すかさず桜さんの手によって瞬(またた)く間に服が剥がされる。
"剥がされる"と言っても乱雑にではなく、彼女の細い指から感じる暖かさはカサついた俺の肌に触れる度に身体がピクリと反応してしまう。
優しくゆっくりと撫でる、その手つきはくすぐったさを感じるが徐々に俺の緊張が解れていくのが分かる。
「…Kさん。今日も、シャワーから浴びる?このまま続けても良いなら、さくらは久しぶりのKさんを感じたいなぁ。」
「今日も、"仕事終わり"からここに来たのでシャワーをお願いしたいかな。」
「ふふ。じゃあ、シャワーを浴びようか。こっち来て。」
誘われるがままに彼女に手を引かれて、浴室に入る。
桜さんは手際のいい動きでボディーソープに泡を作り始めてから俺の肌に泡をつけ始めた。
服を脱がす時と同じ、優しい手つきで俺に触れてくれば自ずと反応してしまう。
滑りが良くなったその指先が流れるように、いやらしく撫ぜる。
彼女の笑顔を見ながら俺は僅かにそそり立つ"ソレ"を感じ取りながら、柔らかいその細い手が触れる度に自分が纏う雰囲気に欲が濡れ始めた。
それに桜さんは気づいたのか、大きい瞳を隠すように両の目を細めて俺と目線を合わせる。
「まだだよ…。ベッドに入ってから、ね。」
その言葉を皮切りにゆっくりとゼリーの様なぷるりとした唇を近づけて、カサついて慣れ親しんだ俺の唇を塞いだ。
次回へ続く
1: 華金
今日は念願の給料日。
待ちに待ったこの日に、(今日こそはっ。)と
激動の業務を数ヶ月間乗り越えた俺はある場所へと足を運ぶ。
そう、とある"花"に逢いに行ける日なのだ。
いつもの俺だったら、
憎き会社に向かう為のこの足が、何度も止まりそうになるのに今の俺は止(とど)まる事を知らない。
それは、俺の"使命感"から来るからだ。
【彼女】に会う為に足早に道を進めば、見慣れた店の看板が目についた。
当時、初回で緊張していた俺はこのキラキラした門が前すら、通るのを恥ずかしさのあまり躊躇(ちゅうちょ)していた。
だが、今となっては堂々とその店の扉を潜(くぐ)れるほど、心が成長した俺にはなんの躊躇(ためら)いすらもない。
……たまに臆することもあるが、な。
2: 竹を割ったような男
「すみません、予約した者ですが…。」
その直後、勢いよく見慣れた黒服が近づいて来た。
「Kさんっ!いらっしゃいませ!待ってましたヨォっ。」
「えぇ……?前回に比べて、酷い有様ですね。どうしたんですか、その顔…。」
目についた衝撃的な顔に突然の俺は驚く。
男の目の前まで現れた青年は、鼻の周りを大きなガーゼで止めたなんとも痛々しい顔立ちだったのだ。
(この男、前回も額とかに傷を作ったりしているがよく生きているな…。)
結構、イケメンの部類だと俺ですら思うのに来る度に毎回、怪我をしているから勿体無いよなぁ。
「いやはや!姫さんの1人が階段で倒れそうなところを助けようとしたら、エルボー喰らっちゃいましてね!見て下さい、この鼻。」
「いやいや、見せなくていいですからっ。その方は竹谷さんのおかげで無事だったんですね。」
「なんとか、守り抜きましたよぉ〜。さて、準備が出来次第のご案内をしますね。こちらのお席でお待ち下さい。」
相変わらず、屈託のない優しい青年で感心するなぁ。
普段、仕事で没頭(ぼっとう)している不健康な俺より儚(はかな)く突然いなくなりそうで不安が過(よぎ)ってしまう。
頼むから長生きしてくれよ。
次回に続く。